旬の特集
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文書作成日:2018/3/22

 現状、多くの企業が定年を60歳とし、その後65歳まで再雇用する制度を採っていますが、定年退職者の中には再雇用を希望せずに定年退職する人もいるかと思います。そこで定年退職をして、その後、当面は働く予定のない従業員の健康保険、雇用保険、年金の手続きについて確認しておきましょう。


 日本の医療保険制度は国民皆保険制度を採っており、生涯何らかの医療保険制度に加入することになります。定年退職後は、会社で加入する被保険者資格を喪失するため、以下の4つの選択肢から1つを選ぶことになります。

(1)定年退職前に加入していた健康保険の任意継続被保険者となる
(2)従業員の住所地(市区町村)の国民健康保険の被保険者となる
(3)家族が加入する健康保険の被扶養者となる
(4)定年退職前に加入していた健康保険の特例退職被保険者となる(特定健康保険組合の場合のみ)

 1つめの任意継続被保険者とは、一定要件を満たした人が定年退職前の健康保険に任意で継続して加入するもので、傷病手当金および出産手当金を除き、在職中に受けられる保険給付と同様の給付を原則受けることができるものです。健康保険料は、退職時の標準報酬月額(平成30年4月現在28万円を超える場合は28万円※)に基づいて決定されますが、在職中は事業主が折半で負担していた保険料を定年退職者自身が負担します。加入できる期間は最長2年間であり、この間の健康保険料は原則変わりません。任意継続被保険者となるためには、退職日の翌日から20日以内に、住所地の協会けんぽまたは健康保険組合で手続きを行います。
※健康保険組合の標準報酬月額の上限は健康保険組合ごとに決まっています。

 2つめの国民健康保険は、会社員以外の自営業者や無職の人が加入するものです。給付については、医療機関等の窓口に健康保険被保険者証を出して受ける療養の給付における自己負担額は3割であり、原則として他の制度と同様です。健康保険料(税)は、前年中のすべての所得などを基に計算することになっています。加入の手続きは退職日の翌日から14日以内に住所地の市区町村で行います。

 3つめの被扶養者は、家族が勤務先で協会けんぽや健康保険組合の被保険者となっているときに選択できるものです。被扶養者の要件には、被扶養者の年収が180万円未満(60歳以上の場合)であり、かつ被保険者と同居の場合は被保険者の年収の1/2未満、別居の場合は年収の額が被保険者からの仕送額(援助額)よりも少ない場合という収入に関する要件があります。被扶養者となった場合は健康保険料の負担がないことから、定年退職者にとって負担の少ないものとなります。

 最後の特例退職被保険者とは、特定健康保険組合に加入している会社に勤務していた退職者のみが加入できるものです。この制度では、医療機関の窓口負担額の一部負担還元金などの付加給付制度が厚いことや、一般的に任意継続被保険者、国民健康保険被保険者と比較して保険料も低いことが特徴です。

 以上のように、健康保険には4つの選択肢がありますが、特例退職被保険者を除いた3つでは給付内容に大きな差がないことから、実質的には健康保険料の負担額により加入する制度を選択することが多いと思われます。


 雇用保険に加入していた人が退職したときには、被保険者の資格は喪失し、基本手当(いわゆる失業手当)を受給します。この基本手当を受給する前提としては、労働の意思および能力を有するにも関わらず、職業に就くことができない場合で、ハローワークにて失業の認定を受けたときとなります。通常の受給期間は離職日の翌日から1年間であり、1年を経過すると給付日数が残っていても受給する権利が消滅します。ただし、定年退職者の場合、退職後すぐに労働の意思のない(休養したい)ときには、受給期間の延長が認められており、離職日の翌日から2ヶ月以内に手続きをすることで、受給期間を最長2年間に延長することができます。よって、定年退職後は予定を立てて対応することが求められます。なお、延長制度が利用できるのは、60歳以上の定年退職者の場合であり、定年退職後再雇用された後に退職した場合には利用できません。基本手当の説明をするときには、誤った情報を伝えないようにしましょう。
 また、基本手当と64歳まで支給される特別支給の老齢厚生年金の両方が受給できる場合には、失業給付を受給した期間は老齢年金が支給停止されます。両方が受給できるときには、いずれを受給するかを検討することになります。


 国民年金は原則60歳まで、厚生年金保険は原則70歳まで被保険者となります。定年退職後は、被保険者資格を喪失し、通常は、年金保険料を納付する立場から、老齢年金を受給する立場となります。老齢年金は、年金制度に10年以上加入していた人が、原則65歳から受け取ることができ、更に厚生年金に1年以上加入していた人は、特別支給の老齢厚生年金として60歳〜64歳までの間に受給することができます。特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢は、性別、生年月日に応じて決まり、現在は支給開始年齢が段階的に引き上げられている最中です。再雇用の希望の有無にも関わるものでもあるため、定年を迎える従業員には個別に受給開始年齢や支給額を早めに確認することを勧めておきましょう。
 老齢年金を受給するための具体的な手続きは、年金の支給開始年齢の3ヶ月前に年金請求書が自宅に送付されることになっています。加入履歴の確認、年金請求書の書き方、必要となる添付書類等、準備が複雑であることから、会社としても、年金の手続きの際には年金事務所で相談、確認しながら進めた方が良いことを伝えておきたいものです。


 現状、定年を迎えた後の選択は多様となり、再雇用や定年退職のほか、他社での就職を目指すこともあります。定年退職者にとって社会保険の取扱いに関する関心は高いため、会社としてもケースごとに整理して説明できるようにしておくことが求められます。

■参考リンク
日本年金機構「厚生年金の支給開始年齢」

日本年金機構「雇用保険の失業給付と年金は同時に受けられるの?」

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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